第八章 奇跡の還る場所

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部屋を出て、リビングに行くと、既に朝食の香りが漂っていた。 「雫、おはよう」 お母さんは今日も明るく、私をリビングに招き入れる。 テーブルには焼きたてのトーストと苺ジャムが置かれている。そして、半熟の目玉焼きに野菜サラダが並んでいた。 いつもより早く起きたからか、珍しくお父さんがいる。 「おはよう。お父さん、お母さん」 「雫、今日はいつもより早いんだな」 私は椅子に腰掛けると、お父さんが声をかけてきた。 「いつもより、早く目が覚めたの」 「上機嫌だな。何かあったのか?」 「それは秘密」 春陽くんたちのことを思うと、淡く優しい時間が流れて、じんわりと心に温かさが広がる。 「だって、好きな人たちに好きになってもらいたいから」 「好きな人たち!? 『たち』って、どういうことだ!?」 「帰ってきたら、改めて説明するね。好きな人と同じ人が、もう一人存在してるなんて初めてなんだもん」 心配性のお父さんが我知らず、反応する。 そんな私たちのやり取りを、お母さんが微笑ましく見つめていた。 「雫、帰ってきたら、きちんと説明するんだぞ」 「じゃあ、行ってきます」 慌ただしいお父さんの声を置き去りにして、朝食を済ませた私は元気よく外に出た。
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