第八章 奇跡の還る場所

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「うん、分かった」 私は一度、呼吸を挟むと、はるくんのお母さんから説明された『共依存病』の真実をそのままなぞる。 「はるくんのお母さんはね、はるくんの――そして、秋斗くんと春陽くんのお母さんなの」 「あの人が……俺たちの母さん……」 私の突然の言葉に、春陽くんは慌てる。 「うん。はるくんは、秋斗くんと春陽くんの兄弟。そして、はるくんと春陽くんは双子の兄弟なの」 「双子……」 春陽くんの声と表情には衝撃が張り付いていた。 「ここから先はさらに信じられない話かもしれないけど……はるくんはね、実は秋斗くんと春陽くんの身体に宿っている魂の片割れ。魂の半身だったの」 「俺の魂の半身……」 春陽くんは突然に繰り出される自分たちの境遇についていけない。ぽかんと思考停止している。 春陽くんは秋斗くんのことを相方、自分の魂の片割れだと言っていた。 春陽くんにとって、秋斗くんは同じ魂を共有する存在。 でも、はるくんは魂が分かれた半身で……。 合わせ鏡のような存在だったからこそ、春陽くんとはるくんはあんなにも全てが似ていた。 「ちょっと……いや、かなり混乱している。兄弟で、俺の魂の半身。つまり、秋斗とは異なる形の……もう一人の俺ってことか」 春陽くんはだんだんと意味を理解していくに連れて、表情を曇らせていく。 それでも春陽くんは動揺を押さえつつ、言った。 「雫。はるって……どんな奴だった?」 「春陽くんそのまま。全てが春陽くんそっくりだったの」 「俺に?」 初耳ばかりの告白に、春陽くんは驚きに目を見開いた。 「桐島陽琉くん。優しくて芯の強くて、いつも太陽のように笑っていた」 後にも先にも心が壊れそうなほど、音を立てて脈打っているのを感じながら、私は言葉を続ける。 「秋斗くんが同じ魂を共有する『魂の片割れの兄弟』なら、はるくんは魂レベルで繋がっている『魂の双子』なのかもしれない」 「魂の双子か」 春陽くんは空に目を向けて、考えるような仕草をした。 「俺も陽琉に会ってみたかったな」 そう願っても、もはや、春陽くんにとって、はるくんは一番近くて一番遠い存在だ。 はるくんはもう、いないのだから――。 一年前の事故で命を失われた魂の半身、どうしても届かない遠い存在。 でも、このまま、『共依存病』が進行すれば、春陽くんもまた、その存在が消え失せてしまうだろう。
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