第八章 奇跡の還る場所

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* 「さあ、雫、話してもらうぞ」 その日の夜、リビングでくつろいでいたら、お父さんが早めに会社から帰宅してきた。 そうだった。 帰ってきたら、秋斗くんと春陽くんのことを説明するという約束だった。 お父さんの剣幕に、私はどう話したらいいのか悩む。 それでも向き合う覚悟を決めて立ち上がった。 「うん。お父さん、お母さん、落ち着いて聞いてね。実は『共依存病』という難病の影響で、好きな人と同じ人が、もう一人存在してるの」 私は静かな声音で言った。 「『共依存病』……。聞いたことがあるわ」 夕食の片付けが終わったお母さんも、お父さんの隣に腰掛けて、私の話に耳を傾ける。 「あのね。私、三宅秋斗くんと三宅春陽くんに恋してるの」 そう前置きして、私は訥々と語る。 秋斗くんと春陽くんのこと。 『共依存病』のこと。 そして、そんな二人に想いを寄せていること。 私は今まで胸の奥に秘めていたことを全て話した。 「そんなことが……」 お父さんはおろおろと信じられないといった顔をしていた。 お母さんも目を瞬かせる。予想だにしなかった言葉を耳にしたようだった。 「信じられない話かもしれないけど、全て本当のことなの。それに私、秋斗くんと春陽くんのことを思うと……」 私は微笑んで、全ての感情をその一言に込める。 「好きすぎて、胸が苦しい」 言葉にすれば、胸の内に生じた衝撃が高鳴る鼓動とともに、次第に温かなものに変わっていく。 秋斗くんと春陽くんの存在がどれほど、私の心の支えになっていたのか。 その答えに気づいてしまったら、もう、後戻りできないと分かっていたから。 「私はこれからも秋斗くんと春陽くんと一緒にいたい。ずっと、二人の隣で一緒に前を向いて歩いていきたい」 はるくんが亡くなってからしばらくの間、私は何度も不安と恐怖で心が押しつぶされそうになった。 それを乗り越えられたのは全て、秋斗くんと春陽くんに出逢えたおかげだ。 「好きなの。どうしようもないくらい、秋斗くんと春陽くんのことが大好き!」 秋斗くんと春陽くんは、私にとって、もはや切り離すこともできないほど特別だ。 だから、その想いを、お父さんとお母さんに伝えたい。ただ、その一心だった。 「……正直、信じられない話だが、雫が嘘をついているとも思えない」 「そうね。それに何より、ここ最近の雫はあんなにも嬉しそうだった。毎日が楽しそうだった」 私の表情を見て、お父さんとお母さんはどこか安堵したように微笑んでいた。
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