第九章 その不屈の果てに、望む人が居るのなら

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「ほんとだ。ぬいぐるみ、可愛い!」 丸い椅子に飾られている、丸くデフォルメされた猫のぬいぐるみを撫でていると、私の右手にふわふわと柔らかい感触が伝わってくる。 その店で、私とねねちゃんは猫のぬいぐるみを買った。 「えへへ、可愛いー」 「ほんとだね」 私たちは愛らしい猫のぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。 「スマホケースもあるんだなー」 目を向けると、春陽くんはその店で、猫の絵柄がついたスマホケースを買っていた。 「もしかして、春陽くんも猫が好きなの?」 「おう。可愛いしーな」 私が疑問を零すと、春陽くんは嬉しそうに答えた。 そういえば、ねねちゃんの家でも、鉢植えに置かれた猫の飾りを見ていたような気がする。 「はるくんは猫が好きなんだねー」 ねねちゃんは満面の笑みを浮かべる。 春陽くんの好きなものを知ることができて嬉しそうだ。 買い物袋を下げて、私たちはピクニック気分で広場を巡り歩いていく。 「あ……!」 その時、春陽くんが何かに気づいて、とある店へと駆け出す。 やがて、私たちのもとに戻ってくると、私とねねちゃんに猫のストラップを差し出した。 「ほら、『友情の証』」 春陽くんは戸惑う私たちに微笑む。 「俺たちがこれからもずっと、一緒にいられるようにさー。まぁ、なんていうか、願掛けみてーなもんかな」 春陽くんの切実な願いに、私とねねちゃんははっとする。 これは、あの時のはるくんと同じ、春陽くんからの特別なプレゼントなんだ。 そう思ったら、何か熱いものが私たちの胸の中を駆け抜けていった。 「うっ……うううぅぅ……春陽くん、ありがとう!!」 「うああああん!! はるくん、大好きだよー!!」 私とねねちゃんは溢れる感情のままに、春陽くんに勢いよく抱きついた。 私たちは覆い被さずのも構わず、顔を押し当てて泣きじゃくる。 「雫、ねねちゃん」 春陽くんが私たちの髪をゆっくりと撫でる。 その感触は、はるくんと同じような、甘く優しく胸を締めつける心地がした。 「てーか、勝手に選んでごめんな。こういうの、好きかと思ったんだ」 耳元で囁かれた春陽くんの声があまりにも優しすぎて、私たちはさらに涙が溢れてきそうになった。 昨年のはるくんとの想い出。 はるくんのいない明日。 でも、私たちがはるくんと出会えた過去は決してなくならない。 今を信じて、そして未来にも繋がっている。 その全てがきっと、奇跡なんだと思う。 春陽くんたちは、これまでどんな人生を歩んできたのだろう? はるくんのことをどう思っているんだろう? いつか、春陽くんたちの口から全てを知りたいと思った。 その遠くを見つめる瞳も、ふたりで抱えている過去も、受け止めてあげられるぐらい、強い人になりたいと切に願う。 淡い夕暮れの中、私は涙まみれの顔を上げてそう誓った。
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