第十章 いずれ訪れる未来

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「雫、ねねちゃん、遅くなってごめんな!」 その時、人込みの向こう側で声がした。 はっとして振り返ると、私服姿の春陽くんが息を弾ませながら、早足でこちらに近づいてきていた。 「今日は春陽くんの日なんだね」 「おう。ここ最近は秋斗の日が続いたから、今日もそうかもしれないと思っていたけどな」 真剣な口調で告げる春陽くんの瞳に決意の輝きが宿る。 「あのさ、雫、ねねちゃん。俺たちは絶対に諦めねーから。時間はまだ、残されているんだしさ」 「うん。信じてる」 「はるくん。わたしたちも絶対に諦めないからー」 両手をぐっと広げる。 私とねねちゃんにはそれが新鮮で胸が弾ける思いを噛みしめた。 「よし、雫、ねねちゃん、時間は有限だ。早く行こう」 「時間は有限……。そうだね……」 その春陽くんの呼びかけにふと、はるくんが言ってた言葉が頭をよぎる。 春陽くんとはるくんは、魂レベルで繋がっている『魂の双子』。 春陽くんを構成する要素、全てがどうしようもなく、苦しいくらいに、はるくんと同じだ。 私は寄りかかっていた幹から背中を浮かせ、みんなと一緒に歩き出した。 行き交う人々の間を縫うようにして、神社の奥へと進んでいく。 やがて、どこからか祭り囃子が聞こえてくる。 音だ。ここにも素敵な音が満ちている。 私は屋台の揺れる音、風の通り過ぎる音、様々な旋律に耳を傾けた。 咲き綻んだ音色の心地よさに耳を傾ければ、それだけで心が震える。 秋斗くんと春陽くん。大切な人たちを救うことができますように。 そして――隣にいる人たちの笑顔が、この先も曇ることがありませんように。 ずっとずっと守れますように。 私はきっと欲張りなのだ。 一人でいた時には思うこともなかった願いは不思議と心地よさしかない。 「はるくん、しずちゃん、行こう! 早く行こう!」 「わわっ、ねねちゃん!」 「ねねちゃん、待てよ!」 ねねちゃんは花が咲かんばかりの笑顔で、私と春陽くんの手を引っ張り、どんどん屋台を巡る。 気がつけば、ねねちゃんは右手にわた飴、左手に林檎飴という完全装備をしていた。 それでも満足していないのか、手当たり次第に屋台を巡って回った。 たこ焼き、焼きそば、フランクフルト、金魚すくい、ヨーヨーすくい、輪投げ、射的。 やがて、一通り回った私たちは神社の裏手で休憩していた。
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