わたし、もうすぐ死ぬんだ。

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あの日から一ヶ月経った。それからの俺達は、“何も話さないクラスメイト”から、“少しだけ話すようになったクラスメイト”になった。それも、話しかけるのは俺からがほとんどで、片桐さんはあの日の前とあまり変わらないように思えた。もしかしてあれは俺が見た、ただの夢なんじゃないかとさえも思った。 ただ、片桐さんはあの日からよく学校を休んだり早退したりするようになった。心なしか細くなったようにも思える。「もうすぐ」ってどれくらいなんだろう、本当に彼女はこのままいなくなってしまうのだろうか、だとしたら、俺はこのままで良いのだろうか。そんなことを毎晩考えては答えが出せずにいた。 そんな悶々とした日々の中、いつものように教室に行くと片桐さんの周りで女子達がなんだかきゃぁきゃぁと騒いでいた。「おめでとう!」「これプレゼントね!」どうやら、今日は片桐さんの誕生日らしかった。彼女の噛みしめるような、本当に嬉しそうな笑顔に俺は胸が苦しくなった。俺は彼女に一体何ができるのか、答えは出ないままだったけど居ても立っても居られなくて靴箱に手紙を置きにいった。「あの場所で待ってる」と書いて。 放課後、その場所に向かうともう既に片桐さんはそこにいた。「遅いよ。」「ごめん、先生に捕まってさ。」「うん、知ってたから大丈夫だよ。怒ってみたらどんな反応するか、見てみたかっただけ。ごめんね。」悪戯っぽく笑う片桐さんは、やっぱり俺の知ってる片桐さんと少し違う。「あ、そうだ、今日、誕生日なんだよね、これ。」「え?」「これしか、今買えるものがなくて、申し訳ないけど…」俺はすぐ近くの自販機で買ったミルクティーを片桐さんに差し出した。本当にこんなもので申し訳ないけど、何もないよりは良いかと思って。「あ…ありがと。」片桐さんは困ったようにそれを受け取った。やっぱり迷惑だったかな、ミルクティー嫌いだったかな、そう心配をしていると片桐さんは俺に背を向けて「それで、用件はなんだった?」と聞いた。「や、特に話があるわけじゃないんだけど、誕生日を祝いたいなって。ごめん、それだけ。」「…それだけのために?」本当はそれだけじゃないくせに意気地なしの俺はそれ以上になにもできなくて「うん、ごめん。それじゃ、」と帰ろうとした。「あ、待って。」振り向いた片桐さんは間違いなく、泣いていた。「ありがと、吉沢くん。じゃ、ね。」再び背を向け帰ろうとする片桐さんの肩を気づいたら掴んでた。「片桐さん、もしよかったらだけど、もっとゆっくり話さない?」
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