わたし、もうすぐ死ぬんだ。

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「ごめん、片桐さん、」 彼女は今まで見たことないくらい泣いていた。その震え続ける肩を擦って良いのかさえわからずに、俺はただ謝った。 「ごめん。」 「もう、謝らないで。しつこいよ。」 少し落ち着いた片桐さんはまた笑ってそう言った。 その困ったような笑顔を見たら泣いてしまいそうになったけど、必死に堪えた。そして、確信した。 「なんかね、もうすぐ死ぬってわかってから、わたしすごく我儘になったの。人に対して“しつこいよ”なんて言ったことなかったのに。ごめんね。」 「俺も正直、最初は思ってたイメージと違うなって思った。でも、今の片桐さんのほうが話しやすくて好きだよ。」 「…ありがと。」 「うん。」 「最初に呼び出されたとき、あんなこと言われて困ったよね?あのときの吉沢くんの顔、忘れられない。ヤケクソだったの。最後くらい、好きな人に想いを伝えて、嘘で良いから思い出を胸に死にたいって思ったの。きっともうすぐ死ぬって言われなかったらずっと誰にも言わず片思いし続けてたのに。」 「なんでよ、言ってよ。」 「フラれたくないもん、傷つきたくないよ。」 「フラれるかどうかなんて、わかんないじゃん。」 「でも、フラれたじゃん。」 「それは本当の片桐さんを知らなかったから。ごめん、一つだけ約束破らせて。多分、俺、片桐さんのこと好きになってる。今もずっと、進行形で。」 「…そんなこと言われても、喜ばないよ。」 「わかってるよ。でも俺だっていつ死ぬかわからないから。死ぬ前に言いたいって思った。片桐さんと一緒。」 「…ずるいよ。吉沢くんも、わたしがイメージしてた吉沢くんとは違う。思ってたより弱々しくてしつこいし、なのにそんな意地悪まで言うんだ。」 「じゃぁ、もう好きじゃなくなった?」 「…やっぱり意地悪だね。もう何も言わない。」 「言ってよ。」 「言わないよ。」 「俺は、好きだよ。」 「…もう。」
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