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ましゅまろと百億万円
「みおちゃんましろちゃんおはよう。今日もめんこいねぇ」
「よつさんおはようございます。ましろはよつさんにほめられてうれしいです」
道すがら、駄菓子屋の前を通ると店主である黒田のおばあさんに声をかけられた。黒田さんは私が物心つくずっと前から駄菓子屋を営んでいるそうだが、八十歳を超えた今でもまだまだ昔と変わらず元気いっぱいだ。私たちのことも、まるで我が子のように可愛がってくれる。
「今日はおでかけかい?」
「はい、スーパーへ買い物に行くんです。今日はレタスが安いんです」
「ましろもみおちゃんのおかいものをおてつだいします」
「まあまあ偉いねえ」
黒田さんは優しい眼差しで真白を見つめる。私でもメロメロなのだ。子どもが大好きな黒田さんも真白には敵わない。いつも見かけて声をかけてくれてはお菓子をおまけしてくれる。遠慮すると悲しまれるため素直に受け取って、代わりに月一くらいで一緒にお茶をするのだ。
「そうでした。よつさんきいてください。きょうはかがりちゃんさんがあそびにきます。いつもましろにおかしをかってくれるのですが、こんどはましろがかがりちゃんさんにおかしをかってあげたいのです」
真白はそう言ってポケットからピンクのがま口財布を取り出した。黒田さんからどれが欲しいのか聞かれ、ショーケースをまじまじと眺める。自分が食べたくなったのか、ときおりヨダレを垂らしてはハッと我に返って口元を拭う。
「かがりちゃんさんはちょこがだいすきです。ですのでこのしかくいちょこをみっつとこのくまさんのぐみをみっつください。そうするとおかねはいくらですか?」
「ましろちゃんは優しいねえ。全部で百円だよ」
財布を逆さまにして中に入っている小銭を全部手の平に取り出す。両手が塞がるからと財布を預かり、お金を数える真白を見守る。我が冴島家では両親が殆ど不在であるため、お小遣いという制度がない。生活費などは両親の厚意で多めに振り込まれるため、そこから家の手伝いをすることで真白にお小遣いを与えるようにしている。そんな自らが働いて手にしたお金を使って佳賀里にお菓子を買おうとしている真白を見て涙が止まらない。優しい子に育ってくれてお姉ちゃん嬉しい。
「じゅうえんがごまいと……あなのあいたぎんいろのおかねがごじゅうえんで……ごじゅうえんとごじゅうえんでひゃくえんです。これでせいかいですか?」
「よくできたねぇ。正解だよ。やっぱりましろちゃんは天才だねぇ」
十円玉五枚と五十円一枚を黒田さんに手渡す。黒田さんは既に真白に骨抜きであるため、数えもしないで真白の頭を撫でた。
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