ましゅまろとピザトースト

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「いいにおいがしてきました」  トースターで焼き始めて数分。室内にはソースとチーズの焼けるいい匂いが立ち込める。朝ご飯のホットケーキは真白の可愛さのあまり全部あげてしまったから私もお腹はぺこぺこだった。早く焼けないかな。  ピン……ポーン。  テーブルに座ってテレビを観ていると、インターホンが鳴った。このインターホンの鳴らし方は間違いなく佳賀里だ。ウチのインターホンは形式が古く、押し込むとピンと鳴り、離すとポーンと鳴る。佳賀里は気合を入れているのか、最初に強く押し込んで二秒ほど待ってゆっくり離す。だからこれだけで訪問者が佳賀里だと分かるのだ。 「かがりちゃんさんがきました!」  真白はそう言って、玄関の方へバタバタと走っていく。ガチャリと扉が開く音がして、佳賀里の騒がしい声が聞こえてくる。 「まっしゅまっろちゃーん! 遊びに来たよー!」 「いらっしゃませかがりちゃんさん。あとましろはましゅまろちゃんじゃありません」  お約束のやり取りをしながら二人がリビングに入ってくる。ちらりと時計を見ると、時刻は十一時半を過ぎたところだった。 「ちーっす!」 「来るの早かったね。昼過ぎって言ってなかった?」 「なんかましろちゃんの声聞いたら早く会いたくなっちゃって。ダッシュで来ちゃった」  手に持っていたビニール袋をテーブルに置く。中から真白へのお土産であろうプリンやお菓子、佳賀里と私がハマってる野菜ジュースを取り出して並べていく。 「あれ? お昼ご飯中だった?」 「うん。ピザトースト焼いてるの。佳賀里も食べる?」 「あー、アタシはいいや。ダイエット中だからさ。あーがとね」  野菜ジュースを渡されてお礼を言って受け取る。ストローを取り出して飲み口に挿してひと口。人参強めの甘さが口の中いっぱいに広がった。 「そう。今日は真白が作ってくれたんだけどダイエット中なら仕方ないか」 「はぁ? ダイエットなんかしてないし」 「いや今自分で言ったじゃん」 「言ってないし幻聴だし空耳だしダイエットなんかしてる場合じゃないしアタシも食べるし」 「はいはい分かった分かった。ちゃんと用意するから座って座って」  さすがに真白の手作りと聞いて黙っている佳賀里ではなかった。鼻息を荒くする佳賀里をテーブルに座らせて落ち着かせる。丁度焼きあがったので、人数分の皿を用意してキッチンミトンを装着する。 「きょうはましろががんばってはーとにしたんですよ」 「アタシのためにハートにしてくれたの~? やだぁ、嬉し過ぎて震えちゃう~ん。ほっぺにチューしていい?」  背後で真白と佳賀里がキャッキャといちゃつく声がする。私は毎日真白と一緒に居るからある程度の我慢ができるが、佳賀里は一週間に一度程度しか会えない。そのため、遊びに来ると私よりも真白にべったりになる。佳賀里の気持ちも理解できるため特に何も思うことはないが、真白がまんざらでもなさそうなのが妬ける。私の妹なのに。っていう変な嫉妬で。やっぱり私の心は汚れているようだ。 「はいどーぞ。真白お手製のピザトーストでーす」  いちゃつきに割り込むように、ピザトーストをテーブルの上に運んだ。
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