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ましゅまろと唯一むに
「さて、ましろちゃん」
「はい。なんでしょうか」
「アタシはダイエット中なのに多大なカロリーを摂取するという罪を犯しました」
「かろりーとはなんでしょうか」
「女の敵です」
「そ、それはおそろしいです。どうすればいいのでしょうか」
「カロリーを消し去るために、全力でダンシングです」
「それではましろもおてつだいします」
神妙な面持ちで向かい合っていた二人はゆっくりと立ち上がり、リビングの掃き出し窓から庭に出た。ガーデニング好きなお母さんのこだわりで、ウチの庭は広めに作られている。しかし今は両親とも海外生活であるため、有効利用はされていない。そのため佳賀里が全力で踊り回っても安全な広さだ。
「真白にちゃんと踊れるかな~。佳賀里、最初はお手本見せてあげなよ?」
掃き出し窓の縁に腰をかけて二人を見守る。佳賀里が踊るのはいつもアレンジ強めのパラパラだ。テンポの速いユーロビートでキレッキレな踊りを見せてくれる。以前は私も付き合わされていたため踊れはするが佳賀里ほどではない。
「じゃあましろちゃん、しっかり見ててね」
「はい。しっかりみています」
佳賀里がスマホを操作して、それを私の隣に置いた。
少し経つとイントロが流れ始め、佳賀里は顎の下で傾けたオーケーマークを作って待機する。Aメロが始まると、両足でリズムを刻みながら右手と左手交互にZを描く。両手を腰辺りでクロスさせ片方ずつ手首を回転させながら頭の上に持っていく。左肩を上げ右肩を下ろし胸の前に腕でスラッシュを作り前方に放つ。片腕を上げ、手の位置を胸と頭の斜め上で繰り返す。数回繰り返して、最後の胸から斜め上に手を払うと同時に視線を斜め下に流す。
「なんて、すてきな……」
久し振りに見ても全然衰えていないどころかキレが増しているような気さえする佳賀里の踊りに、真白は握り拳を作り前のめりで夢中になっている。踊っているときの佳賀里は笑顔がキラキラと輝いていて本当に綺麗だ。どんなにきつくても、踊っているときは笑顔を絶やさないのが佳賀里の素敵なポリシー。
流れ始めて一分ほどで曲が終わる。佳賀里の動きが完全に止まったその瞬間、真白がパチパチと盛大な拍手を送る。佳賀里は真白に向けてピースとウィンクを送り返した。
「全然衰えてないね。相変わらずキレッキレじゃん」
「こんなすてきなおどりはましろみたことありません! かがりちゃんさんはすごいです」
「あーがとあーがと! やっぱ踊るときもちいーわ」
太陽のような笑顔を咲かせる佳賀里に、羨望の眼差しを向ける真白。ぽやぽやとしたイメージを持たれがちな真白だが、実は運動神経は良い方である。身体を動かすことも好きなため、きっと身体がうずうずしているのだろう。
「じゃあ、ましろちゃんも一緒に踊ろうか!」
「はい、ましろせいいっぱいがんばりますのでよろしくおねがいします!」
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