屍の彼女

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 この世のものではなくなった彼女に会いたいと願ったのは僕の方なのに、実際に現れたら怖気(おじけ)づいてしまった。  僕の愛なんてこの程度のものだったんだ。     今、(となり)にいる彼女はいい香りのするさらさらの髪も、桜色の爪も、見とれるようなつやつやピンクの(くちびる)も持っていない。  かすかな腐敗臭(ふはいしゅう)と黒ずんだ指と真っ白な爪と唇。  生きていない彼女をもう好きじゃないと思う僕は薄情(はくじょう)だろうか。    あの日、彼女が事故に巻き込まれたのは僕と会う約束をしていたせいだ。    僕のせいで、彼女はこの世から消えてしまった。  もう一度会いたい。  そのためなら何でもする。  そう願っていたのに、死んだはずの彼女が隣にいることが今は恐い。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!