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この世のものではなくなった彼女に会いたいと願ったのは僕の方なのに、実際に現れたら怖気づいてしまった。
僕の愛なんてこの程度のものだったんだ。
今、隣にいる彼女はいい香りのするさらさらの髪も、桜色の爪も、見とれるようなつやつやピンクの唇も持っていない。
かすかな腐敗臭と黒ずんだ指と真っ白な爪と唇。
生きていない彼女をもう好きじゃないと思う僕は薄情だろうか。
あの日、彼女が事故に巻き込まれたのは僕と会う約束をしていたせいだ。
僕のせいで、彼女はこの世から消えてしまった。
もう一度会いたい。
そのためなら何でもする。
そう願っていたのに、死んだはずの彼女が隣にいることが今は恐い。
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