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真っ暗な中、女のかすれた声がかすかに聞こえる。
「あたしのこと、今でも好き?」
どう答えれば正解なのか。
「好き? 嫌い? ねえ」
その二択、どちらを選ぶべきなのか。
声を押し出そうとする喉は震えて動かない。
「ねえ。聞こえてる? 聞いているんだけど!」
弱々しかった声が 苛立ちを含んだ強いものに変わったことに嫌でも気付いてしまう。
同時に僕の心音は爆上がり、どく、どく、どく、音を立てて答えをせかす。
早く答えなければどんどん彼女の機嫌は悪くなる。
「ねえ! あたしのこと! 好きなの、嫌いなの、どっち」
「す、好き、だよ」
懸命に絞り出した声は震えて怯えの色を含んでいたけれど、彼女は満足気に頷いた。
「そう。良かった」
声がやわらかなものに変わったことに僕は、ほっとする。
同時にできない約束をしてしまったような気持ちの悪さが残った。
「あ・た・し・も・よ」
耳元でささやかれた低い強い声にぞっとする。
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