婚姻証明書

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婚姻証明書

姜王国に到着し、早速、部隊全員が集合した。 会議室に、ウェン、トト、ドレイク、隊員たち、ラムズ、そしてアシュラスが集う。 アシュラスが療養にくることは事前に伝えてあるが、あんな戦いの後だ。 恐怖心がないと言えば嘘になる。 全員の顔がこわばっていた。 「みんな、まず回復してるようで何よりだ……。私もこの通り今は何も問題なく動けている。あと2週間は隊全体としては休養期間としよう」 みんな小さく頷いた。 だが、やはりアシュラスの存在が気になって仕方がないようだ。 「ええと、あと、事前に伝えてあるとおり、アシュラスがここで療養することになったので……。よろしく……。」 マジかよ……とでも思っているかのように、隊員たちの顔が引きつった。 「具体的なことは、ドレイクが担当するよ。アシュラス……何か、みんなに言いたいことはあるか……?」 アシュラスは椅子から立ち上がった。 「やあ、みなさん。2週間ぶりだね。まずは親善試合を盛り上げてくれて感謝してるよ。わかっていると思うが、あの時の戦闘はあくまで親善試合だ。みなさんが強すぎて、ついつい俺も本気を出してしまったが、スポーツマンシップに則り、恨みっこなしでいこうじゃないか」 アシュラスはにこにこと笑顔で言った。 それはそうだがお前の匙加減一つだろ……という空気が流れた。 ラムズを見ると、ラムズはアシュラスを見ようとしていなかった。 だった2週間しか経っていなかったが、ラムズは少し大人っぽくなっていた。 首元や肩に筋ばった感じが出てきている。 二人でアシュラスと戦っていたとき、初めての実戦にもかかわらず、ラムズの戦いっぷりは隊員たちの力を凌いでいた。 あのヒリヒリとした生死をかけた戦いの中での連携。 不謹慎ながら楽しさすらあった。 早くラムズに声をかけてやりたいな…… そう思っていると、アシュラスがジロリとこちらを見た。 「おい、ウェン。聞いてるのか?」 「あ、ああ。聞いてるよ」 アシュラスは一枚の紙を取り出しして、ウェンに渡した。 ウェンは紙に目を通した。 「……婚姻証明書……?」 「そうだ。俺、クロフィード・アシュラスと、お前、リィ・ウェンは結婚し、夫婦になったのだ。」 「は……?どういうことだ??」 ざわめきが起こった。 「同性は結婚できないだろ……?しかも、俺はサインもハンコも押してない」 「俺は仕事が早いんだ。意識が戻ってからすぐ婚姻制度改革案を出して、反対派には『帝王の許可がいる』という文言で納得してもらったよ。3日前から法律は施行されている。サインやハンコなんて、瑣末なことだ。本人達が納得してればいいだろ」 「いや、納得してないからサインやハンコを押してないんだよ!」 「まあ、いいじゃないか。それを訴えたからと言って、役所や警察や裁判所が帝王の俺からお前を守ってくれるとは思ってないだろ?」 権力が強すぎる。 「ついでにラムズの戸籍を作って、俺の実子として登録した。これでウェンとラムズも社会的な親子だ。たのむから、親として倫理的な関係でいてくれよ」 「お前が一番倫理観が無いだろ!」 ラムズを物理的に葬れなかったため、社会的に押さえ込むその執念深さに隊員たちもドン引きした。 「そういうわけで、隊員のみなさん。これからは俺のことは帝王としてでなく、ウェンのパートナーとして気軽にお付き合いくださいね。名前も、アシュラスじゃあ緊張するだろうから、『アッシュ』と呼んでくれ」 アッシュは機嫌良く言った。 「あと、住まいは、俺とウェンはひだまりの小屋に住む。ラムズはこの寮でみなさんと共同生活がいいだろう。ラムズも立派な戦士になるために、諸先輩方に色々教わらないとね。可愛い子には旅をさせないと。いいだろ、ウェン?」 「あ、ああ。ラムズが寮で共同生活をするのは賛成だ。だが、本来隊長の俺は、みんなとこの寮に住むべきなんだ。ラムズが寮に入るなら、俺も寮に戻るよ。アシュラス……いや、アッシュは療養目的で来てるのだから、ホテルを用意するか小屋を使えばいいと思うけど」 アッシュは不満そうな顔でウェンを見た。 「お前、俺たちが夫婦だということを簡単に忘れるなよ。夫婦の住まいが別々でいいわけないだろ。しかもそれが寮だなんて……こいつらに俺たちの夜の営みが聞かれていいのか?お前、時々変態だよな」 「はあ?!俺がお前とそんなことするわけないだろ!虫唾が走る!俺は規定どうり寮に戻る!ドレイク!アシュラスには、ホテルを用意してくれ!」 「しょ、承知しました」 ドレイクは苦々しい顔をした。 「もう話にならないな!今日は解散する!」 ウェンは無理矢理に打ち合わせを終了した。 こんな面倒な奴と一緒に生活するのか……と隊員一同は思った。
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