18人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
ハーレム
アッシュはふらりと立ち上がって、シータの元へ行った。
「おい、シータ。お前、強くなりたいか?」
「は、はい!なりたいです!」
「なんでだ?」
「はい?」
「どうして強くなりたいんだ?」
「は、はい。私の家系は、代々聖典の研究をする学者の家系でした。私も学者として育てられ、聖典の素晴らしさは熟知していました。しかしながら、実際に聖典の内容を体現できたのはフェイオン様ただお一人。訓練校が設立されたので、できる限り聖典原本を自ら体現できるように戦士に志願しました」
「畑違いから来たんだな。面白い。ウェン、ルルシェ、シータはラムズと組ませよう」
「え!俺がラムズと……?格が違いすぎませんか??」
「さあ。その環境を生かすも殺すも、お前次第だよ。俺は面白そうだから、そうするだけだ。」
「は、はい!がんばります!」
「あと、今日から夜は俺の部屋に来い。いいことをしよう」
そう言って、アッシュはシータに軽くキスをした。
「????」
シータは混乱した顔をしていた。
♢♢♢
「ルルシェ様……アッシュは何を企んでいるのですか?」
「シータ様は遺伝的にオーンの量、質に限界が来ています。それをアシュラス様のお力で解放してあげるおつもりなのでしょう」
「……なら、冷たい言い方ですが、今、力のある隊員に目をかけた方がよくありませんか?」
「ウェン様は、決戦に連れて行くなら、力のある者か忠義のある者か、どちらを連れて行きますか?」
「力のある者でしょうか?やはり、勝って生き残らなくては」
「アシュラス様は、忠義のある者を連れていきます。一番怖いのは身内の裏切りなのです。それに、一人が強くても戦場では限界がありますでしょう?」
たしかに、スタジアムでの戦いは、隊員があのタイミングで来てくれなくては俺とラムズは無事ではなかった。
「シータ様はいわば、聖典のファン。同じく聖典を拠り所としているウェン様、ラムズ様と力を合わせて戦えるとふんでいるのですわ」
「なるほど。ちなみに先ほど言っていた"いいこと"というのは…?」
ルルシェはにっこり笑った。
「ウェン様も行かれてはどうですか?行けばわかりますわ」
♢♢♢
ラムズに今回の戦いぶりについて声をかけたくて、救護室へ向かった。
ノックをすると、ヴィータが中からドアを開けた。
ラムズはベッドに入り、上半身は起こしているのだが、なぜか服を脱がされている。
ジュリンとトゥラがもたれてラムズに密着しながらヒーリングをしているが、彼女らは防具は着けておらず、薄着だ。
いや、もうケガは治ってるでしょ。
と、突っ込まずにはいられない。
ラムズは困惑した表情をしている。
「ウェン様もおケガを?」
ヴィータが話しかけてきた。
「あ!いや、私は大丈夫です。ラムズに話があって……」
「そうですか。では、席を外しますね」
そう言って、彼女たちは部屋を出て行った。
ウェンはラムズのベッド脇に立った。
「ラムズ、たった一週間でまた強くなったな。」
ラムズはさっきの落ち着きとは別人のように、また不安げな表情をした。
これだけ強くなったら、もう少し得意気でもいいだろうに。
「シータがこれからラムズと一緒に修行することになったよ。シータは聖典の勉強をよくやっているし、努力家だ。よろしく頼むよ」
ラムズは静かにうなずいた。
「それにしても、なんで裸にされてるんだ?」
布団をめくるとパンツ一枚にまで脱がされている。
逆セクハラだ。
アッシュが「勝てたら付き合っていい」と言っていたからだろうか。
……え?じゃあラムズがここでその気になっていたら、この救護室でもしかしたらハレンチなことが起こっていたんだろうか?
急に複雑な気分になってきた。
風紀から考えたらけしからんが、部隊の士気が上がってきているのは確かだ。
今更とめることはできない。
もやもやと考えていると、ラムズがベッドから起き上がり、膝立てをしてキスをしてきた。
え?
いや、どういうこと?
ラムズが健全な男子なら、さっきの状況があったんだから、女の子に手を出すのが普通だよね?
恥ずかしいの?
好みの子がいなかったの?
色々考えているうちにもラムズのキスは終わらない。
「……し、したいの?」
興奮で上気したラムズは、うなずいた。
一番風紀が乱れてるのって、俺とラムズとアッシュのとこだよな……と、思った。
♢♢♢
ラムズの希望を叶えた後、訓練所に戻った。
それぞれが、アッシュや彼女たちのアドバイスを受けてトレーニングをしていた。
アッシュは随分隊に溶け込んでいた。
トゥラがアッシュに何やら話しかけ、こちらに二人でやってきた。
「ウェン様、一つお願いがございます。私はラムズ様に武器を作って差し上げたいのですが、私たちではもうラムズ様には敵いません。ラムズ様の本気を見たいのですが、ラムズ様とウェン様で手合わせをしてくださいませんか?」
「それはありがたい。木刀はとっくに卒業でいいだろう。な、ラムズ」
ラムズに話しかけると、ラムズは嬉しそうにほほえんだ。
これは武器が手に入って嬉しいというよりは、救護室でことが済んでご機嫌になっているのだ。
まあ、ラムズが幸せならいいんだけど……
「俺が手合わせしてやってもいいぞ」
ラムズの幸せオーラがいかにも気に入らなさそうにアッシュが言った。
「まさか。俺がやるよ。俺も久しく武器を手に取ってないし」
それに関してはかなり不安になっていた。
正直、キスかヒーリングしかしていない。
ラムズに負けるんじゃないだろうか、とすら思う。
「じゃあ、今からひだまりの小屋近くの草地に行きましょう」
トゥラに促されて移動した。
最初のコメントを投稿しよう!