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家から歩いて10分のアリーナ駐車場。私はかじかむ手でスマートフォンのメッセージを確認する。
『もう少しで着くよ 何か目印になるようなものある?』
彼からのメッセージに、私は深呼吸した。
『3番の駐車場にいます。ピンクのニットにジーンズを履いています』
私が返信すると、すぐに既読が付く。18時を少し過ぎた頃、私の前に黒い車が停まった。車の窓が開き、白いパーカーを着た彼が私に微笑んだ。
「お待たせ。隣にどうぞ」
「お願いします」
私はぺこりと頭を下げ、車のドアを開けた。
「めっちゃ礼儀正しいじゃん」
彼の驚いた表情が面白くて、私はくすりと笑う。
「珍しいんですか?」
私が聞くと、彼は頷いた。
「珍しいね。てか初めてかも」
彼の助手席に座ると、ふわりと甘い匂いがした。
「寒かったでしょ? 暖房強めるね」
「そんな、お構いなく」
私が首を振ると、遠慮しなくていいのにと彼は笑う。
「どこか行きたいとこある?」
彼の問いに、私は首を傾げた。
「私、あまりドライブしたことなくて」
「そっか。じゃ、適当に走るね」
私がシートベルトを締めたことを確認し、彼は車を走らせた。
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