衝撃

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 言い終わらないうちに、月華に強く抱きしめられる。  どうしたんだろう。力が強くて、少し痛い。 「……なぁ、お前、それ、どういう意味で言ってんの?」  苦しそうな声が、熱い息と共に耳にかかる。  月華、どこか痛いの? どうしてそんな声を出すの?  「俺が毬也以外に触れるのが嫌とか、二人で暮らしたいとかさ……」 「えっと……」    聞かれてもわからない。咄嗟にそう思って、口から出たんだ。  でも、僕に冷たかった本当の兄さんだって、同じようになれば絶対に止める。月華はここでの僕の兄弟だもの。そう思って当たり前だよね? 「毬也……」 「ひゃっ」  耳殻を舐められ、中に直接声を入れられる。かかる息としっとりした舌の熱さに、背中とお腹がぞくぞくした。  長い指を持つ手は僕の首をすべり、鎖骨を撫でて、浴衣の襟を割って中に忍び込んできた。 「ぁ、んッ」  羽根でくすぐられるような感触に体がビクリと震え、変な声が出てしまう。  なにこれ。いつもと違う。どうしてこんな触り方を……。 「げ、月華、待って」  尻尾が僕の足に巻き付く。する、する、と徐々に上に上がり、先端が太ももの付け根をかすった。 「や、やだ。月華、どこ触って」 「毬也、毬也っ……!」 「あっ!」  痕が残りそうなくらい、首筋をきつく吸われた。胸の先をきゅっと摘まれ、太ももを脚で割られる。尻尾が下帯(したぎ)の中に忍び込んできて、僕の性器を上下にこすった。 「……毬也、好」 「嫌っ、やめて!」  突如、お腹と性器に感じたことのない疼きが走る。同時に頭の中に大輪の褥仕事が浮かび、怖くなって月華の体を突っぱねた。  布団から起き上がり、はだけた浴衣を寄せ集めて自分を抱きしめる。  月華は尻もちみたいな格好をして、両手を畳に付けて呆然とした表情をしていた。でもすぐに、夢から覚めたように目を見開いた。 「俺、なんてことを。……ごめん、毬也、ごめん!」  泣きそうな表情に変わり、必死で僕に謝ると、四つん這いで背を向ける。 「月華、待って!」  はっとして呼び止めた。けれど月華は尻尾を丸め、逃げるようにして部屋を飛び出して行ってしまった。  どうしよう。月華は看病に来てくれて、猫族のやり方で撫でてくれただけかもしれないのに、突き飛ばすなんて。  いつも優しい月華にあんな顔をさせるなんて。  けれど追いかけたくても頭と体がフラフラして立てず、僕は布団の中で体を丸めて激しく後悔した。
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