きになるイチョウの悩み

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「それでどうなの先生?」  ふくよかな女が向かいに座る初老の医者に訊ねた。 「私のお腹はやっぱりおかしいの?」 「ふぅむこれは」  あごを触り続ける医者に、女は前のめりになる。 「はっきり言ってちょうだい。ここ最近食べてもたべてもお腹が空いてどうしようもないの。きっとこれは何かの病気よ!」 「まぁひとまず落ち着いてください」  医者が女をなだめる。 「これが内視鏡検査の結果です」  手渡された内視鏡写真に女は目を見張った。 「これって本当に私の?」 「間違いありません」 「じゃあここに映ってる……」  女は写真の真ん中を指差す。 「植物のようなものは何なの?」 「それはですね」  医者は咳払いを一つしてから言う。 「イチョウの木なんです」  医者の言葉に女は呆気にとられる。 「イチョウってあの?」 「はい。街路樹でお馴染みのイチョウです」 「ふざけてるの?」  女が語気を強めた。 「胃腸にイチョウってただのダジャレじゃない」 「決してふざけてなどいません」  唾を飛ばす女を医者は手で制す。 「何かお心当たりはありませんか?」 「どういう意味よ?」 「イチョウの実であるギンナンは極稀に胃腸に根付いてしまうことがあるのですが、これはギンナンを丸呑みされた場合に限ります」  女性は目を瞬かせる。医者はさらに訊く。 「ギンナンを噛まずに飲み込まれたのでは?」 「そう言えばついこの前……茶碗蒸しに入ってたのを一つか二つ」 「なるほど。それなら胃腸でイチョウが発芽してもおかしくはありませんな」  
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