ピリオド・マイガール

4 ピリオド・マイガール

　アラームが鳴る三十分前、カーテンの隙間から陽光が漏れ出して有美は目を覚ました。普段なら二度寝を決め込むのだが今日は違った。ズレたパジャマを整えて机に向かう。デスクライトを灯して、紙を取り出した。

　想像して、消す。
　構図を決めて、消す。
　輪郭を描き、消す。
　色遣いを決めて、消す。
　遠近感を確認して、消す。

　人を羨んだ自分を、消す。
　数字に拘っていた自分を、消す。
　過去と決別しようとした自分を、消す。
　後戻り出来ないと悲観していた自分を、消す。
　ピリオドを打って終わろうとした自分を、消す。

　消して、消して、消して、描き上げていく。
　消して、消して、消して、自分を形作っていく。
　消して、消して、消して、貴方に出逢うまで続く。

「やっと会えたね。私だけの、愛しのマイガールさん」

　消して、消して、消して、また描き始める。