曽光武

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曽光武

コンビニでバイトをしていた 台湾の留学生の 曽光武さんと仲良くなった。 彼の親戚に 日本兵だった人が居た。 高砂族出身の曽二等兵。 彼は、薫空挺部隊の一人だった。 光武さんに、 当時の集合写真を見せてもらった。 曽二等兵は、光武さんにそっくり。 フィリピンのレイテ島に 強制不時着をして ブラウエンの米軍飛行場を攻撃した後 行方不明になったらしい。 早速、探しに行った。 陸軍の第一師団の参謀に衣装を設定して 彼等が、強制不時着した時間帯を目指して ジャングルから飛行場を 双眼鏡で確認した。 リュック二個に 米と無印の缶詰を用意してある。 やがて、ものすごい米軍の 対空砲火の中を 一機の双発輸送機が、 降りてきた。胴体に日の丸が見える。 見事な胴体着陸だった。 十数人の日本兵が機体から躍り出る。 操縦席のパイロットも飛び出す。 米兵は、味方機だと思って 最初は、誰も発砲しなかったが、 手榴弾で日本兵が、 近くのスチンソン連絡機や ダグラス双発輸送機を攻撃し出してから 反撃を開始した。 素早く自分のいるジャングルに逃げて来た。 ここまでは、歴史本で確認していた。 一人の陸軍少尉が 分隊を誘導してきた。「おい!こっちだ!」 一瞬、ハッとした顔付きで 若い少尉がこっちをみた。 直ぐに、日本軍の少佐の階級章と 参謀片章を確認して敬礼した。 自分も答礼する。 「参謀殿!薫空挺部隊で有ります。」 「よくやった、ここで見ていたよ。」 駄目もとで 曽二等兵が居るか聞いてみた。 すると、 偶然会う事が出来た。 持って来た二つのリュックをこの分隊に与えて 勝手に セブ島への撤退命令を 持って来た文書で与えた。 これで玉砕せずに生き残れる。 後は、道中の運による。 「おい、隊長、味方に注意してオルモックで食料を補給しろよ。日本兵の追い剥ぎが多いからな、奴らは、人肉も食うらしい。」 「はい、よく判りました。高砂族は強いので、ご安心下さい。」 曽二等兵の腰には デカイジャングル刀が、 三十年式銃剣とは別に 吊られていた。 彼等と握手して別れた。
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