空母信濃

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空母信濃

空母信濃に乗り組む予定だった 吉澤二等整備兵曹は、 信濃が沈没したので助かった。 彼は、高等科整備術学校を卒業した マーク付きの整備下士官で優秀だった。 誉エンジンのエキスパートで 紫電改や彩雲、天雷、連山等々 筑波基地で 零戦の酸素瓶を交換中 座席に頭を突っ込んでいた為 グラマンの機銃掃射に 気がつかず 危うく殺られる所だった。 部下の年配の兵隊が 真っ先に逃げたのが原因。 整備員不足で忙しく 何時も冷めた味噌汁の食事だったらしい。 彼から、 空母信濃の事を聞いて 行きたくなった。 海軍少尉の衣装でジャンプした。 信濃は、 米軍の潜水艦の雷撃により 鋭く傾斜していた。 素早く、飛行機格納庫を覗いてみた。 誰も居ない。 中には、多数の ロケット特攻機桜花が 残っていた。 操縦席の計器を外して 袋に入れる。 外に出ると 水兵達が多数居た。 年配の兵隊が多く 海に飛び込むのを ためらって居た様だった。 自分に対し 一人の水兵が言う。 「分隊士!私は金槌で有ります!」 予め用意して、現代から着ていた 搭乗員用の ライフジャケットを 脱いで、その年配の水兵に与えた。 よくよく顔付きを見ると 叔父さんの店で経理をしていた人によく似て居た。 年配だった彼の顔を思いだし 偶然とは恐ろしいと思った。 自分が彼を助けたみたいだ。 彼が海に飛び込むと同時に 空母信濃は転覆した。 そのタイミングで帰った。 桜花の部品は貴重なので 高く売れた。アメリカの航空博物館に。
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