澤村兄妹には秘密がある

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真司(しんじ)さん、話があります!伸司さんだから特別に話します!絶〜っ対に、これは他言無用ですよ!」  鼻息荒く宣言する彼女の眼の前に皿をおく。    苺のショートケーキ、真司が仕上げた中でも今回はかなりの自信作だ。  ナッペも超絶上手く行ったし、断面も綺麗。なんてったって玉座に鎮座する苺の完璧なフォーム。  この芸術作品をチラ見した彼女、澤村(よう)は黒目がちの瞳をさらに大きく見開いて、ほぅと小さく息を吐いた。さっきまでの勢いが急速に萎んでいくのが見ていてわかる。  頬が紅潮し、唇は涎が垂れそうな半開き、両頬に添えられた細い指は何やらわちゃわちゃ動いている。  この幸せそうな顔、これが真司には堪らなく好物。やめられない止まらない。 「ちょっと誘惑しないでください。今日は絶対に、きちんと話すんだから」 「そんな事言ってもう3回目だけど。とりあえず、食べたら?話は聞くからさ」 「ダメ。この前は食べてから話そうと思ったら、お腹いっぱいでどうでもよくなっちゃったもん」 「何の話か知らないけど、そんな勢いつけないと言いにくいことなんでしょ?無理に話そうとしなくてもいいじゃん。言うべきときがきたら、自然と話せるもんだよ」  ほら、あーんしてやろうか。彼女の困ってる顔が可愛くて、真司はいつもちょっとイジワルしてしまう。 「好きです」    唐突な、しかも予想外の告白に、持っていたフォークが空中で止まった。
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