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そこまで話すと、一旦静かに目を閉じる美々。
しかし、彼女は直ぐに目を開けると、今度は幽体の私を見つめながら、続きを話し始めた。
「でも、此方のお嬢さんの奈月さんに会って……私は、変われたんです。奈月さんは、会ったばかりの私を信じて、真剣に話を聞いてくれました。面接対策まで一緒にしてくれて。私は、それがとっても嬉しかったんです」
美々の言葉に目を見張る私。
そんな私の瞳を真っ直ぐに見つめたまま、美々は必死に自分の思いの丈を紡いできた。
「奈月さんは、幽霊の私を、ちゃんと人間扱いしてくれました。最初は、祓おうとして来ましたけど……それでも、最後には私に寄り添ってくれて。一緒に未練を無くそうとしてくれました。未練を無くすだけなら、最終面接を受けるだけでいい筈です。でも、奈月さんは私を合格させようとしてくれました。ただ未練を無くすのではなく、一番良い形で、私が成仏出来る様に考えてくれたのです」
――こんなに霊に寄り添えるあたたかい人なら、きっと、人間にもあたたかいのではないでしょうか。
「だから私は御社で……奈月さんがいるこの場所で、働きたいと思ったのです。私を、是非此方で働かせてください」
柔らかな――しかし、自信に溢れた微笑みを浮かべ、そう言い切る美々。
気付くと、彼女の肉体は透け始め――少しずつ、細かい光の粒子となり始めていた。
私は直感的に理解する。
(ああ……美々の心残りが無くなったんだ)
と。
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