空腹巫女と就活霊

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(とはいえ、どうしよう。不審物なら、やっぱり通報した方がいいのかな) いかんせん困り果てた私は、ゆっくり近寄ってみると、ほんの少しだけ背伸びをして、それの様子を窺ってみる。 すると――。 (えぇ、なんか超声が聞こえるんですけど) ソレが、何やら泣き声の様なものを発しているのに気が付いた。 というか――。 (あれ、人じゃね?) そう――遠目で見た時には分からなかったが、近付いてみると分かる。 黒いリクルートスーツを着た女性が、背中をくるりと丸め、膝を抱えて――所謂(いわゆる)、体育座りをした状態で大号泣しているのだ。 (不審物じゃなかったけど……どう考えても不審者じゃん) リクルートスーツという姿から察するに、就活に破れて堪らず此処で泣きだしてしまったというところだろうか。 とは言え、私だって人間だ。 血も涙もある。 故に、流石に彼女をこのまま放置するわけにはいかないと思ってしまったのだ。 例え、それがどう考えても地雷案件であると頭では分かっていても――。
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