空腹巫女と就活霊

8/19
前へ
/19ページ
次へ
通常の霊なら、これで一発退散になる筈だ。 そう、その筈だった――が! 「えーん!痛いです~!酷いです~!」 何度大幣で引っ叩いても女性が消える気配が一切無いのである。 というか、いい加減泣き声が煩い。 よりボリュームを増した騒音の元凶を半眼で睨みつけながら、どうしたものかと手を止め、(しば)し考え込む私。 (まさか、こいつ……普通のお祓いじゃ祓えないってこと?) ――おバカそうに見えて、実はラスボスレベルの悪霊だとか? すると、私が手を止めたからか、一旦泣き止む女性。 彼女はぐずぐずに涙と鼻水にまみれた顔を上げると、じっと私を見上げて来た。 「あ!もしかして、やっと私が可哀そうな霊だって分かってくれました?居候OK的な?」 いやマジで違うから。マジで。 一体どうなってんだ、この霊の頭の中は。 都合のいい事ばかり考えて……脳内がお花畑なのか? ついつい、そんな底意地の悪い事を考える私。 でも、通常の方法で祓えないのは事実であり現実なので――私は再度、頭を抱えてしまうのだった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加