削除中

3/11
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 自由に書けるとは言ってもルールはある。既にある作品の二次創作、テレビでピー音が入るような不適切な表現、個人情報や誹謗中傷、出会い目的や宗教活動なんかもダメ。とにかく公序良俗や道徳に反することなく節度を守って創作しなければならない。  あと作中に特定の商品名を出すのもNG。一文字以上変えたりイメージを損なう表現を避けるなど配慮を怠らなければならない。歌詞の引用もできるだけ避けるべきだろう。  ま、金銭が発生しない素人作品にそこまで神経質になる必要はない。俺の場合、ルールスレスレの攻めた作品ばかり書いている。そのためたまに『この作品は時代にそぐわない』だの、『女性を蔑視してる』だのコンプラガーだのポリコレガーだの騒ぐ奴が湧いてくる。そんな時もすぐ削除。煙が立ったら火がつく前に消す。反論したり腹を立てるだけ時間と労力の無駄だ。  ここに投稿しているやつらの大半はゆくゆくは書籍化、漫画化、アニメ化とメディア進出を夢見てるのか、当たり障りの無いよくある大衆向けの作品ばかり書きやがる。だからつまらない。  そりゃ俺も10年目くらいまでは王道で正統派な作品を書いてたさ。それが正解だと信じていたから。だがそれでは大量の作品の中に埋もれるだけで誰にも注目されない。いくら面白い話を書こうが読まれなければ意味がない。だから俺は路線を変えた。少しでも注目してもらおうと歪で奇抜な作品ばかり書いた。旬の時事ネタやタブーに踏み込んだり、パクリとパロディスレスレの危ういものだったり、小説と漫画を合体させたり、選択により結末が変わるアドベンチャー形式やすごろく形式などもはや小説と呼べるのか怪しい作品まである。  別にメディア化なんて大それたことは望んじゃいない。自分の生きた証をネットの片隅に遺せればそれでいい。そもそも俺の作品なんぞメディア化したい奇特な人間なんざいないだろうが。  それに運よくメディア化したとしても原作を大きく改編されて別作品に仕立てあげられることもある。そんでそっちの方が好評なら原作者としてのプライドはズタズタだ。  評価や批評に左右されたり担当なんかついてあれこれ口出されたら書きたいもんも書けなくなる。創作なんて誰の目も意見も気にせず気楽にやるのが一番よ。それが15年間執筆活動を続けてこれたコツよ。  本音を言えば、一冊くらい。薄っぺらくてもいい。売れなくてもいいから本を出したい。一応作家になると意気込んで実家を出た以上、お袋に示しはつけときたい。金を貯めて自費出版って手があるがそれだと認めて貰えたことにならないし、売れなかった時のダメージは相当だろう。だからだらだらと15年経っちまったわけだが。  他の投稿サイトならもっと規制が緩かったり、ここより利用者が多い場所があるだろうが、ルールの中でギリギリを攻めるのが俺の作風だ。そのやり方が正解なのかどうか知らんがそれなりに読者はついている。15年も居て今更他の場所では書けんよ。俺の居場所はニブリスタだけだ。  おっと。そのニブリスタからメールが来ている。内容はまあ、想像できる。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!