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和子宅にやって来た天使と悪魔
寿老爺「ああ、そうしよう。(2人で将棋を仕舞いながら)和ちゃん、ホント猛男はダメだよ。この前も(柴又)駅前で大喧嘩やったって聞いたし……いくらご近所だって人は人、内は内だ。ね?」
和子「そうかなあ?……(立ち上がって帰る2人に)うん、じゃあね」
和子、玄関の戸を開けて中に入る。
和子「ただいまあ」
為子「ああ、お帰り。暑かったろ?お風呂に入って汗流しな。もう沸かしてあるよ」
和子「ううん。いいわ。お父さん、もう帰って来るから。あちしはそのあと」
為子「いいよ、先に入っても。あんな稼ぎの悪い親父なんか、気にしなくていいよ」
和子「また、そういうことを云う。お母さんったら……」
為子「だってホントだもん。稼ぎよかったらあたしだってこんな53にもなってパートに行きゃあしないよ。ま、それよりかさ、お前も学校を卒業してさ、こうして働きに出てくれて、いくらかでも家に入れてくれるから助かるよ。さあさ、服着替えてきて晩ご飯にしな。もう支度してあるよ」
和子「はあい。でもお母さんにそう云ってもらえるとあちしも嬉しい。働き甲斐がある」
和子、靴を脱いで2階に上がって行く。
為子(М)「でもホントはさ、三流商事なんて小さい会社じゃなくて一流企業の方がよかったんだけどね」
和子、階段途中でずっこける。舞台奥から天使と悪魔が登場(※服が濡れている設定)。屋根の上でカラスが「アホウ、アホウ」と鳴く(実際には黒子が棒の先につけたカラスを操り鳴き声を出している)。
悪魔「へーくっしょい!」
天使「はっくしょん!」
悪魔「(石を拾って投げる振り)うるせえ!このアホがらす!(黒子に向かって)てめえか?アホウと云ったの」
黒子「違います、違います。(棒の先を指差して)カラス、カラス」
悪魔「(黒子に)おお、そうか。じゃいいんだけどよ……(天使に)まったくよ、てめえのお陰で全身ずぶ濡れだぜ」
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