社畜、転生する

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社畜、転生する

(残業で終電逃しちゃった) 月明かりが優しく降りそそぐ。 (毎日こんなことをしているから寝不足でめまいがする…) ふと、自分の体を見るとまるでぼろ雑巾のようだと思った。 体に力も入らずふらふらと歩く。 (なんでこんなところで働いてるのか自分でも分からない。辞めるにしても今よりいいとこに就職できるかどうか) 自分の実力を考えるとドンッと現実を突きつけられる。 (………朝から何も食べてないしセブントゥエルブで何か買ってから帰ろう) 私は考え事をするとお腹が空く体質だ。 仕事のせいで食欲が抑えられず暴飲暴食が続いている。 おかげさまで私のお腹は存在感のある形になった。 しかし私はこの習慣をやめることができず今日も今日とてセブンへ足を運ぶ。 辺りは静けさが漂っており足音だけが聞こえる。 (カツカツという音が心地いい。ヒールを履くと姿勢が良くなるし歩き方も綺麗に見えるから好きだ) 最近よく聞く乙女ゲームのCMのリズムでカツカツと音をならす。 カッ、カツカツ、カッカツ。 (楽しい) (よく考えたらハラスメントで訴えれば上司辞めさせられるんじゃないの?  会社は世間体が一番って感じだし、 そうと決まれば被害うけた人や理不尽に辞めされられた人達に証言してもらおう! ) 愉快な気分になると地獄のような状況も楽観視できた。 (セブントゥエルブの新作のスイーツが食べたい…、話題の乙女ゲーをやりたい…) 今まで止まっていた自分の時が一気に動き出した。 (これが深夜のテンションというやつか…! ) 悲しいかな、勢いで考えているから朝になれば訴えてやろうなどやっぱりやめようとなるだろう。 カツカツ、カッ、カツン! それでもさっきよりは軽い足取りで歩けた。 (うんうん、明日もやっていけ) ぐさッ………! 瞬間、鉄臭い匂いが立ち込めた。 『え? え…? 』 ごりッ…、お腹に刺さったナイフを回される。 『ぐッ……ゴハッ…』 口内に鉄の味が広がる。 (こんな簡単に死ぬならもっと楽をすればよかったッ……! ) 誰かが走り去っていく。 意識が薄れるなか考えたのは………。
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