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『ウオォォォォ! 死んでたまるか! 』
『なァにが結果を出せだ、早く帰れって言ったのはテメェだろうが!! 』
『死ねないッ! あのクソ上司を辞めさせるんじゃァッ! 』
今までの鬱憤だった。
「…目を覚ましたぞ! 奇跡だ! 急いで旦那様をお呼びしろ! 」
バタバタと騒がしくなった。
どうやら私は助かったらしい。
きっとお腹の贅肉のおかげだろう。
命の恩人?はお金持ちなのかな、大きな家だし専用の医師まで雇っているのかも。
「お…おお、お嬢様」
蚊の鳴くような声でエプロンドレスを着た人が四つん這いになっている。
『あの、助けていただ』
「ヒィッ…」
お礼を言おうとしただけなのに女性はなぜか言葉を遮って怯えている。
「申し訳ございません!
お嬢様、どうか辞めさせないでください!
私には病気の妹がいてお金が必要なんです!
だからどうか……なんでもします! 」
(この様子だとこの人が助けてくれたわけではないみたい)
『あの? あなたのことを言ったわけじゃないですよ? 』
どうも起きた時の言葉を自分の事だと思っているようだ。
何かトラウマがあって、フラッシュバックでもしたのだろうか。
女性は変わらず震えている。
まるで、大人に叱られるのを恐れる子供のようだ。
『ねぇ、大丈夫? 何があったのか私でよかったら聞こうか?』
客人用にしてはずいぶん大きいベッドから〝飛び降りて〟彼女の方に向かう。
「え……、お嬢様…もしや記憶が…! 私のせいでッ…、申し訳ございませ…」
「リアベラッ! 目覚めたのか! 」
「リアベラ、まだ立ち上がってはだめよ…! 安静にしていないと…、貴方は二週間も眠り続けていたのよ!? 」
またもや言葉を遮り、私と同じぐらいの年の〝大きい〟男の人と女の人が部屋に入ってくる。
『リアベラ…? あのどなたか存じませんが助けていただいてありがとうございます』
私の知り合いであると思われる二人は私の言葉に凍りついた。
冬になり只でさえ寒いのにこの部屋だけ何度も温度が下がった気がした。
「うそ……」
「リアベラ、お前……記憶が…!」
女の人は意識を失いそうになり、男の人は驚きでそれ以上言葉が出てこないようだ。
「奥様! お気を確かに! お嬢様は記憶が混濁しているだけです」
「すまない…、私がもっと気を付ければお前は誘拐などされなかったのに……」
男の人が私を〝抱き抱える〟。
(え? 何? さっきからおかしい、呼ばれ方もそうだけど何か…)
抱き抱えられたことによりようやく自分のからだの違和感に気づく。
(この人達が大きいんじゃない、私が小さくなったの!? )
『すみません、下ろしてください! 』
「え? 」とショックをうけているが、今は気にする余裕がない。
息を切らしながら、窓の方に行く。
ガラスに反射して映った自分は……。
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