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何がなんだかわからないまま、安村の説明を待つ。
「逆だよ、逆」
「逆?」
「そう。確かに「まいったな」って言った。美咲君が聞いているとは思わなかったが。君は僕の言葉を、仕方なく関係をもったんだと捉えたんだろ?」
「はい」
「違うよ。君を牽制までしていたのに、覚悟を決めたら今までよく気持ちを抑えきれていたなと思うくらい想いが溢れてきてな。それで「まいったな」」
「え……っと」
戸惑う美咲に、安村はそれに、と付け加えた。
「美咲君は僕が好きでもない女性と関係をもてるヤツだと思っているのかい?」
美咲は安村を見上げた。穴が空くほど見つめて、ゆっくり首を振った。
安村が誠実なのは、美咲が一番知っている。
「じゃあ……」
緊張で声が震える。この先の言葉は言わないと決めていたけれど、今なら。
「す、好き……って言って……もいいんですか?」
どもりながら、つっかえながら美咲はその一言を口にした。
安村は、嬉しそうに笑った。
「やっと聞けた」
その笑顔に、美咲の涙腺は三度目の決壊をした。
「うぇっ……好きぃ。好きっ……ですっ」
嗚咽混じりで、涙でボロボロで。
しゃっくりを上げながら必死に紡いだ言葉を安村はキチンと受け止めてくれた。
美咲と視線を合わせるため、少しだけかがむ。
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