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更に2つほど取り出すと美咲の手に押し付ける。
おばあちゃんちに行ったら置いてある類の、大きめで砂糖をまぶしているやつ。
久しぶりに見た。
「タバコを止めるときに、どうにも口淋しくてな。代わりに飴を舐めていた、というわけさ。今じゃ立派な飴好きのオッサンさ」
おどけた言い方に美咲は吹き出した。
酒のせいかツボに入って笑いが止まらない。
「そんなに笑うなよ。……今は酒飲んだあとくらいなんだから、飴を欲するのは」
「だ、だからって。この……チョイスは、渋いっ」
「色々試した結果だ。これが一番効くんだよ」
薬か何かのように言いのける安村にますます笑いが止まらない。
「困ったな……」
安村が眉を寄せるのをよそに、美咲はひとしきり笑ったのだった。
※
家に着いた美咲は安村に貰った飴を一つ口に頬張った。
大ぶりの飴だ。最初は舌で転がすのも一苦労。
外側にまぶしてあるザラザラしている砂糖。丁寧に舌で舐め取ると、飴本来の味が口に広がる。
(あ、レモンだ)
かき氷のレモンを食べたときのように柔らかい甘酸っぱさ。
口いっぱい広がる優しい味に美咲は微笑する。
堪能している内にふいに思い出した。
(そういえば……)
昔読んだ漫画でファーストキスはレモン味って書いていたことを。
じゃあこれが初キスの味……。
「ちょっ!なっ……」
一人顔を赤くする。
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