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今まで飴の他、レモン味の食べ物なんか山程食べてきた時は一切思い出さなかったのに。
なんで今、思い出すのか。
「ファーストキス、か」
自らの唇に触れる。
24歳にもなって男性と付き合ったことない美咲は、キスも未体験だ。
どうせ、初めて触れるなら。
「安村さんがいい」
いつものように美咲君と呼んで、ニカッと笑って。
優しく唇に触れて貰えたらどんなに幸せだろうか。
「あーっ!もうっ」
美咲は近くにあったクッションを抱きしめた。
安村のことを考えるだけで顔が熱い。胸が苦しい。
男性と付き合ったことがなくても、この気持ちは知っていた。
15年前に経験したことがあるから。
美咲は息を吐くと、声には出さず口だけを動かしてある二文字を空に呟いた。
安易に言葉にしてしまったら、再び抱いたこの気持ちが叶わないまま破れてしまいそうな気がしたから。
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