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立ち位置
彼にとって今の美咲はどんな立ち位置なのだろうか。
そんなことを考えながら美咲はまた安村と小料理店のカウンターに並んで座っていた。
――ママが連れてこいとウルサイんだ。――
安村から誘いがあって再び店に訪れたのは先月。そして今日は美咲の誕生日祝いでの来店だ。
再会した5月の中旬から、月一回は会っている。
嬉しい反面、美咲は複雑な思いも抱いていた。
安村への想いに気付いたのはいいが、最初にあれだけガッツリ「友人の妹」だと釘を刺されたのだ。
恋愛経験ゼロの美咲はどうアプローチすればいいか悩んでいたのだ。
薄々美咲の気持ちに気づいているのだろう。安村をけしかけて再会のきっかけをくれたママに感謝だ。
「おめでとう。いくつになったのかな?」
「25です」
「そうか。……若いなぁ。オジサンには君が眩しいよ」
あ、また線を引かれた。美咲は少しだけ皮肉を込めて言い返す。
「初めて会った時はもっと若かったですよ」
「そうだったな。大きくなったなぁ」
安村は気にかけた様子もなく、いつものようにニカッと笑う。
「僕には兄弟がいないからな。美咲君のような「妹みたいな存在」は貴重だ。こんな年上でよければまた懲りずに飲んでくれたら嬉しいよ」
結局「妹」なのか。ならば。
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