小心者

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小心者

記念に、というつもりはなかった。 だが、奇しくも2つ買ったぬいぐるみは美咲とデートした証になった。 お互い一つずつ持ち帰ったサメのぬいぐるみ。 ベランダでタバコをくゆらせながら考える。 なんでサメだったのか。つり上がった目つきと尖った歯で、お世辞でも可愛いといえないフォルム。 (次、彼女とあったら聞いてみるか) 安村はそう考えて、苦笑する。 先程まで会っていたのにすぐに次の約束を取り付けようとしている自分に呆れる。 きちんと付き合っている訳ではないのに。 自分のズルさにため息を付いた安村は窓越しにベッドの片隅に置いてあるサメのぬいぐるみを見る。 そしてため息と一緒にふぅーっと煙を吐いたのだった。 ※ フラッと入った居酒屋だが、デートで使うカップルが多いのか、案内された場所は半個室になっていた。 飲むときはカウンターに並んで座っていたからか、個室で向かい合うとなんだか尻の座りが悪い。 それでも他愛のない話と酒を飲んで、このまま解散できるかと安村が期待していた時に、美咲は核心に触れた。 何歳差まで付き合えるか、という美咲からの質問。 きた、と思った。
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