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美咲の気持ちにはとうに気付いていた。昔のようにすまないの一言で納得はしてくれないだろう。
安村はしばし思案したあと、正直に答えた。
「僕は同い年かせいぜい2,3歳差までだな」
一瞬顔を曇らせた美咲はすぐに笑みを浮かべて問いかけた。
「なんでですか?」
「いくつか理由はあるが。一つは仕事柄、だな」
「仕事柄?」
「そうさ。僕が初めて勤めたのは共学の高校だったからな。最初に受けもった教え子との年の差は5つだ。5歳年上は気にならないが5歳下はあいつらと同い年かと思うと、な」
「そうですか」
「君はどうなんだい、美咲君」
「私は……」
少しだけ言い淀んで、それでも真っ直ぐに安村を見据える。
「今気になる人は8歳……いえ、今は7歳上なのでそこまでは許容範囲です」
ハッキリと伝えてくる美咲に安村のほうが飲まれそうになる。
「そうか。君がうまくいくことを祈っているよ。なんせ「妹」みたいなもんだからな」
いつも通り笑えただろうか。
安村の内心の動揺をよそに美咲はポツリとつぶやいた。
「私じゃ、ダメですか?」
安村は息を吐く。
「……君には他にいい人がいるだろう」
「いないです」
「君のことは妹のように……」
「でも妹じゃない」
「……それはそうだが」
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