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少し肌寒い。 まどろみの中、手探りで布団を手繰り寄せようとした美咲より先に、それがフワリとかけられる。 近くに自分とは違う体温、息遣い。 (そうだ私、安村さんと……) 思い出すと恥ずかしいけれど、それ以上に心が体が満たされている。 幸せな気持ちで目を開けようとした瞬間、安村のつぶやきが耳に届いた。 「……まいったな」 ため息と共に吐き出された言葉。 浮かれていた気持ちにサアっと冷水を浴びせられる。 (そうだ。安村さんは……) 美咲の初めての男になるのを拒んでいたのに。 打算はあった。 優しい安村のことだ。美咲が押せば断らないだろう、と。 だからこうして安村は関係を持ってくれたのだ。 きっと安村のことだ、起きたら責任を感じて付き合おうとでも言うのだろう。 (私のこと、好きじゃないのに……) 認めたくない。だけど事実だ。 目頭が熱くなる。 一気に苦しくなった心を安村にさとられないように美咲はギュッと目をつむった。 ※ 「あ、起きたかい、美咲君」 目をつむっているうちに寝入っていたらしい。美咲はぼんやりしている頭で声がする方を見る。 既にひとっ風呂浴びたのか、身支度を整えていた安村が少々歯切れ悪く問いかける。 「体は、その大丈夫かい?……昨日無理させたんじゃ?」
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