462人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫です」
「そうか、良かった」
ホッとしたように笑う安村は、次の瞬間には真剣な表情を浮かべる。
「美咲君、順番は逆になったが付き合おうか」
予想した通りの安村の言葉。
本来なら嬉しいハズなのに、美咲は泣きそうになる。
彼の言葉に嘘はないのだろう。だけど、どうしても責任を取るために言っているように聞こえる。
(そんなつもりじゃなかったのに)
美咲は首を振る。事前に決めていたのだ。
さぁ、ちゃんと笑顔で重くならないように明るく言おう。
「気にしないでください。ただ、練習したかっただけですから」
予想していなかったのだろう。
安村は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「美咲君は……」
「安村さん、お風呂借りていいですか?」
「ん……あぁ、いいよ」
何か言い募ろうとする安村を遮った。
早く、早く。
安村の案内がじれったい。
「ここにタオル置いておくよ」
ごゆっくり、のセリフと共に閉められた洗面所の扉。
同時に涙がポロポロと溢れてくる。
声が漏れないように歯を食いしばりながら、美咲は浴室のドアを開けたのだった。
※
身体を念入りに洗って泡を流した美咲は、浴室を出ると昨日の服一式を再び着て身支度を整える。
湿り気を帯びた下着が、昨夜の出来事を明確に伝えて来る。
最初のコメントを投稿しよう!