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「米田先生、からかうのは止めてもらえますか」 「からかってなんかいないですよ、安村先生」 やっと安村に先生をつけた真希だったが、含みのある笑いは消えない。 安村はもう何も言うまいと、黙ってタバコを吸い続ける。 友達期間もそこそこ合ったし、何より長い付き合いだ。 これ以上安村を突っついたところで何も話さないことはわかっているのだろう。 ニヤニヤしつつ、先に部屋を出ようとした真希は、唐突に振り返った。 「安村先生」 その勢いに安村が驚いている間に真希はグッと親指を立てた。 「今度はうまくいくといいね」 「……あぁ」 一度は結婚まで考えてプロポーズまでした元彼女の応援。 真希との恋愛は終わっているし、自分なりにケリはつけていたつもりだ。 だが、美咲が関係を深めようとアピールをしてきた時、真っ先によぎったのは、「傷つきたくない」という気持ちだった。 4年前、真希と別れてから深い関係になる女性は作らなかった。 25から28歳まで付き合った真希。もちろん、彼女と家庭を作るつもりだった。 だから、プロポーズしたのだ。 だけど、返事はNO。 今思えば縁がなかった、の一言で済む。が、彼女との間にわだかまりがないかというと、嘘になる。 幸いにも真希とは最初に赴任した高校以来、一緒の勤務地になることは今までなかった。 今日研修で偶然会ったのだって、別れて以来なのだ。
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