目撃

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目撃

ブブブ。 ポケットに入れている携帯が震える。幸いにも仕事終わりだった美咲はすぐに確認する。 驚くと同時に笑みを浮かべた。 そして指を素早く動かして、相手――安村――に今夜会うことの了承の旨の返信をした。 初めて体の関係を持ってから3週間。毎日のように安村にメッセージを送ろうとして消し、送ろうとしては消しを繰り返していた。 安村のことだ。美咲があの場であの言い方をすれば断れないことはわかっていた。 彼の優しさにつけこんだことに対する罪悪感で、どうしても送信ボタンを押すことは出来なかった。 だから安村から連絡が来たときは、まさか、という気持ちだった。 更にもう一度付き合うことを提案されるなんて思ってもみなかった。 揺れた。 うん、と頷いて恋人になりたかった。 だけど、「まいったな」の言葉が耳から離れなかった。 気づいたら「このまま、『練習相手』じゃ駄目ですか?」と、問いかけていた。 一瞬安村の顔をよぎった感情には知らないフリをする。 もう一度念押しのように安村から確認があったが、彼はニカッと笑うとそれきり美咲に同じ話を蒸し返すことはなかった。 長い残暑が終わってやっと秋めいた頃だった。 安村との関係も夏の盛りからだから、もうじき3ヶ月を迎えようとしていた。 安村との逢瀬は、両手では収まらなくなった。 体を重ねるたびに、好きな気持ちが募る。 体の関係だけではなく、時折映画を見に行ったり、美術館に行ったりもしている。
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