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わざわざ会社から数駅離れている上、飲み屋街じゃない出口だから、知り合いに見られているとは予想していなかった。
安村との関係は一言では伝えられない。美咲は黙っているより他なかった。
「言えないってことは……もしかして、パパ活?」
口調は冗談めかしていたが、流石に聞くに耐えない。
美咲はギロリと彩葉を睨んだ。
「っと、ごめん。そんなつもりじゃ……」
「たとえそうだとしても、吉田さんには関係ないよね?」
「うん、関係ない。けど、知りたいの」
「なんでよ」
「ん、ただの野次馬」
ワクワクと目を輝かせて彩葉は断言した。
ふう、とため息をついた美咲に彩葉はサラリと言い添える。
「言いたくないなら言わなくてもいいけど。……でも誰かに話したいんじゃない?そのヒ・ミ・ツの関係を」
彩葉のこういう敏いところは、少し苦手だ。だから営業としての素質は高いのだが。
美咲が答える前に会社の入っているオフィスビルに到着した。
「あら、時間切れ」
彩葉はパッと表情を変えて仕事モードになる。
共にエレベーターに乗り込むとそれぞれのオフィス階のボタンを押す。
先に自分のフロアについた彩葉は軽く手を上げて颯爽と降りていった。
「この仕事一段落したら飲みに行こ!」と、言い残して。
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