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きっかけ
「いや~!青春だねぇ!!」
ヒューと口笛でも吹きそうなテンションで言うと、彩葉はウーロン茶をグイッと飲み干した。
一緒に任されている仕事が一段落したところで、彩葉の宣言通り飲みに来たのだ。
もっとも彼女は酒が飲めない体質なので、ウーロン茶オンリーだ。
お茶で飲んでる人と同じくらいテンションを上げる彩葉はいつ見ても感心する。
酒飲みの美咲は彩葉に遠慮することなく美味しそうに水割りを飲み干すと、彩葉の分も合わせて同じ飲み物をオーダーする。
美咲は彩葉に洗いざらい話していた。
彩葉が聞き上手ということもあるが、誰かに聞いてほしかったのだ。安村のことを。
ただの会社の同僚で、同期で、違う部署。
プライベートのことをお互い深くは知らない彩葉。
友人でもない関係の彼女には、このややこしい関係を話しやすかった。
「いやー!少女漫画みたい!初恋の人と結ばれるって」
「結ばれた、って言っていいのかな?」
「いいよ、いいよ。実際そうじゃん!初めてのもの全部あげたんでしょ?」
かぁっと頬が熱くなったのは、きっと酒のせいだ。思い込もうとした美咲に彩葉は追い打ちをかける。
「いやー、赤くなってる!可愛いー」
語尾にハートマークでもついているように言われ、美咲は固まる。
友人にいないタイプだ。どう反応したらいいかわからない。
黙っている美咲に彩葉はしみじみ語る。
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