474人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけでホッとしたように笑うと、ポケットから飴を取り出す。
「今、これしかないんだ」
おばあちゃんちに行ったらあるような、ザラメがまぶしてあって果物の味がする飴。
兄と同い年の人が選ばなそうなチョイスに、美咲は安村の顔を見つめた。
「好みじゃなかったかい?」
「年寄りくさいからじゃねぇか?」
「っつ。仕方ないだろっ。これが好きなんだから」
兄のちゃちゃ入れに安村は半分照れたように言い返す。
美咲は手を引っ込めようとした安村に首を振って飴を受け取る。
「ありがとう……ございます」
安村は嬉しそうに、ニカッと笑ったのだった。
兄とは3年でクラスが一緒になって急速に仲良くなったらしい。
安村は、2週間に一度は訪れていた。
そのたびに美咲にお土産と称してちょっとしたお菓子を渡す。
何故か和菓子が多かったのは、安村が曾祖母の代から四代に渡って同居しているためだ。
いつも膝をついて美咲の顔をきちんと見てくれる安村。
体は大きいのに、目はキラキラしていて大型犬に似ている。
美咲がお菓子の礼をいうと、ニカッと朗らかに笑う。
子どもの美咲にも真摯に向かい合う彼に、怖い以外の感情を抱いていったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!