きっかけ

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それだけでホッとしたように笑うと、ポケットから飴を取り出す。 「今、これしかないんだ」 おばあちゃんちに行ったらあるような、ザラメがまぶしてあって果物の味がする飴。 兄と同い年の人が選ばなそうなチョイスに、美咲は安村の顔を見つめた。 「好みじゃなかったかい?」 「年寄りくさいからじゃねぇか?」 「っつ。仕方ないだろっ。これが好きなんだから」 兄のちゃちゃ入れに安村は半分照れたように言い返す。 美咲は手を引っ込めようとした安村に首を振って飴を受け取る。 「ありがとう……ございます」 安村は嬉しそうに、ニカッと笑ったのだった。 兄とは3年でクラスが一緒になって急速に仲良くなったらしい。 安村は、2週間に一度は訪れていた。 そのたびに美咲にお土産と称してちょっとしたお菓子を渡す。 何故か和菓子が多かったのは、安村が曾祖母の代から四代に渡って同居しているためだ。 いつも膝をついて美咲の顔をきちんと見てくれる安村。 体は大きいのに、目はキラキラしていて大型犬に似ている。 美咲がお菓子の礼をいうと、ニカッと朗らかに笑う。 子どもの美咲にも真摯に向かい合う彼に、怖い以外の感情を抱いていったのだった。
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