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自分の子もまだなのに、先に伯父になるのかと動揺した前野は、胸をなでおろす。
じゃあ、安村のこの自信はどこから来ているのか?
尋ねた前野に、安村はニカッと笑った。
「美咲君が僕に惚れているのはわかっているからさ。あとは本音を話せるようになるのを待つだけだ。職業柄こういう扱いには慣れているからな」
安村の言い分に、前野は呆気にとられたのち、吹き出す。
安村の肝の据わった言いように、前野は安心する。
親友の懐の深さと優しさに。そして、妹の男の見る目に。
安村はいいヤツだ。今度こそは幸せになってほしい。
その相手が、あの美咲なのが少々複雑なところだが。
そして深々と頭を下げた。
「バカな妹だが、よろしく頼む」
「こちらこそ、大切にさせてもらいます。お義兄さん」
「やめろっ。生々しい!」
半分……いや、8割本音だ。前野はゾワッと鳥肌が立った腕をさする。
もっとあからさまな会話をしていたはずなのに。
「お義兄さん」と呼ばれる方がよっぽどリアリティがある。
安村はいつものようにニカッと笑う。
人を安心させる笑顔に、前野もようやく笑えたのだった。
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