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爆発
安村が予約してくれていたホテルは、部屋から芦ノ湖の絶景を見ることができた。
「中々いい部屋だな」
キャリーサービスで箱根湯本駅からホテルに届けてもらっていた荷物を床に置いた安村は、美咲の後ろに立って窓からの景色を堪能する。
目の前に広がる芦ノ湖。そしてその向こうに富士山が顔を出している。
まさしく絶景だ。
「本当に素敵です。……ありがとうございます」
日帰りで行けるからか今まで箱根に宿泊したことはなかった美咲だが、こんな素敵な場所があるなんて。
(ダブルでも良かったのに……)
部屋がツインだったのがちょっとだけ残念だ。
それを引いてもこのロケーションは素晴らしかった。
「ここ知っていたんですか、安村さん」
「いや」
真後ろから聞こえて来る安村の声。
顔が見えない分、彼の声に集中してしまう。
安村の魅力の一つである、低くてよく通るバリトン。
声が後ろから聞こえてくるだけで彼に抱きしめられているように錯覚して、変にドギマギしてしまう。
「同僚に教えてもらったんだ。僕も箱根に泊まるのは初めてだから」
――前の彼女とは泊まっていないんですか。
喉から出かかった言葉を飲み込み、美咲は振り返る。
真後ろに立っていてくれてよかった。見上げても身長差があるから、微妙に目線が合わない。
「夕食までまだ時間あるので、先にお風呂に行きませんか?」
「ん……あぁ、そうしようか」
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