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信じられない②
「嘘……」
「さっきからそればかりだな。嘘じゃないさ」
「だって、キスも体の関係も……私から」
確かに、と安村は笑った。
「恋愛経験ゼロなのに、あんな誘惑の仕方どこで覚えたんだい?」
からかうような口調に美咲は憮然とする。
「おっと、すまない。そういう意味じゃない」
「ならどういう意味ですか」
「好意を持っている女性からあんな風に合意のサインを出されたら、気持ちなんか抑えられないさ。年下だから、とか、友人の妹だから、と無理矢理自分を誤魔化していたのに。理性なんか吹っ飛ぶ」
「えっ……」
今度は美咲が顔を赤くする番だった。
「だから順番逆になったけれど付き合おうと言ったのに。君は首を横に振るんだもんな。……まいったよ」
「だって……安村さんが」
「ん?僕が?」
「私の寝顔見ながらさっきみたいに「まいったな」って。本当はシたくなかったのに、私が迫って仕方なく……」
またジワッと涙が滲む。安村は慌てて美咲を止めた。
「泣くのはストップだ。えっと……」
安村は本当に記憶にないのか、必死に思い出そうと腕を組みながら眉間にシワを寄せる。
と、不意に「ああ!」と合点がいったように声を上げた。
「アレか!」
なんだ、といったように安村は笑った。腑に落ちないのは美咲だ。
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