471人が本棚に入れています
本棚に追加
友人の妹
「やっちゃんが女の子連れて来るなんて、まぁ」
「たまにはいいだろ?友人の妹なんだ」
冷やかそうとする小料理屋のママに牽制の意味を込めて、安村は「友人の妹」を強調した。
何か少しだけ面白くない。
そりゃあ、「友人の妹」で正解だけど。
少しだけがっかりした自分に、美咲は内心焦る。
そんな美咲の葛藤を知らずか、安村のいつもの定位置だというカウンターの片隅に並んで座る。
「美咲君……」
「美咲ちゃんっていうのね。ビールでいいかしら?」
安村が好みを聞くより早くママに訊ねられる。
が、美咲が答えるより先にママは瓶ビールとコップを二人の前に置いていた。
横で苦笑いをしながら安村が言い添える。
「ここでは彼女がルールだから」
「当たり前でしょ。私の城よ」
美咲はたまらず噴き出した。
ゆっくりしていってね、といい添えたママの笑顔に気負っていた何かがすうーっと解けていく。
安村が懇意にしているのがわかるくらい聞き上手のママ。
美咲はあっという間にこの店が好きになった。
美咲が酒飲みということもすぐにバレる。
「やっちゃん、いいところ見せないと」
そういうとママは店で一番高い焼酎のボトルを安村に見せる。
流石に一瞬勘弁してくれ、という表情を見せた安村だったが、ママには勝てない。
諦めたようにボトルを入れることを承諾した。
「ママには敵わないな」
最初のコメントを投稿しよう!