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切り替えたようにニカッと笑うと、安村はママの仰せの通り美咲に水割りを作った。
安村も事前に兄に聞いていたようだったが、美咲は中々の酒豪だ。
さらに安村の好みの辛口の日本酒も焼酎もイケる口だ。
「若い女性と水割りを飲み交わせるなんて嬉しいな」
自分の水割りも作ると梅干しを2つ沈めた。
「これが旨いんだよ」
言葉通り美味しそうに一口飲むと、ママの作った料理をパクリと食べる。
「やっちゃん、親父入っているわよ」
「もう30も過ぎた立派なオッサンさ」
「なぁに言ってるのよ、私から見たらまだまだ若いわよ」
ねぇ、と美咲に同意を求める。
気圧されるように頷いた美咲にママは満足そうに笑みを浮かべた。
「でしょう?……あら、いらっしゃい」
まだまだ喋りたそうなママだったが、ちょうど来た客のおかげで二人はやっと解放された。
ほうっと息を吐き出したのは二人同時。思わず顔を見合わせ笑った。
「なかなか愉快な店だろう」
少しだけ困ったように眉をひそめながらも、いつものように心地良くバリトンを響かせた安村に、美咲も深く頷いたのだった。
※
「え?安村さん、恋人いないんですか?」
「いたら美咲君と二人で飲んでないさ」
酒が進み、口も軽くなる。
どういう流れでその話になったのかは思い出せない。
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