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美咲が今まで付き合った人がいないことを伝えると、意外だなと呟いた後、安村も数年恋愛から遠ざかっていると告白したのだ。
「なかなか教師という仕事柄、同僚以外の出会いはなくてな」
安村は母校で教職についているのだ。
美咲は少しだけからかってみたくなった。
「生徒から告白されたりしないんですか?」
「おいおい」
安村は呆れたように笑う。
「美咲君、僕の勤務先は男子校だぜ。仮に共学だったとしても絶対に生徒には手を出さんさ。ま、研修で会う同僚の中には教え子と結婚している人もいるが」
安村は残った水割りを飲み干すと、サラリと付け加えた。
「最初に生徒として出会ったら生徒としてしか見ないさ。最初に恋愛対象として入れていないからな」
酔いが一気に醒めた。
(それなら私は……)
「なら私はずっと「妹」カテゴリーですか?」
「ん?ああ、そうだな」
安村は美咲の言葉を肯定する。
「というよりたまに会う親戚の方が的確か。どちらにせよ、可愛い妹分だよ」
「……じゃあ今日からそこに「たまに飲みに行く」を付け加えてください」
うまく笑って言えているか不安だったが、杞憂だったようだ。
安村はニカッと笑って頷いた。
「了解。さて、そろそろお開きにするか。……あぁ、財布はしまってくれ。ここは兄貴分の僕に払わせてくれよ」
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