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5話 嶺二:ホストクラブ「BLUE DIAMOND」
ネオン街の一角に、ホストクラブ「BLUE DIAMOND」があった。
数年前にできたばかりの店だが、この一帯では人気店として有名である。
嶺二は髪をオールバックにして、黒の高級スーツを身にまとい「BLUE DIAMOND」の入口に立った。
開店前だが、堂々と中に入る。
重厚な扉をあけると、壁一面にプレイヤーの写真が出迎えた。
トップの目立つ位置には、ナンバーワンである嶺二の写真が飾ってある。
自分の写真がナンバーワンの位置にあることで、仕事前に気を引き締めることができた。
嶺二は、もう28歳だ。
この界隈ではそう若くない。
長く続けるつもりはないが、生きていくには金がいる。
……借金を返し終えても、まだホストやってるなんてな。
この歳までホストをやってるなんて、この業界に足を踏みいれた時には、想像もしていなかった。
借金は、嶺二ではなく、親が作ったものだ。
子供の頃、男を作って出て行った母親も、借金だけ残して消えた父親にも、恨みしか残ってない。
両親共に、あれきり会ってないし、家族とも思ってない。
ずっと一人で生きてきた嶺二には、新しい家族も必要なかった。
だからこの先、何を目的に生きていくのか、決めかねている。
「レイさん、おはようございます」
「おう」
開店前の掃除をしていた、数人のホストが頭を下げる。
嶺二は頷きながら、奥へ進むと、目の前が一気に広がった。
フロアは、濃いブルーを基調とした、落ち着いた雰囲気の内装だ。
オーナーが、インテリアにも気を遣っていて、格式高く見せている。
通路からフロアへは、階段が少し。
フロアの一角には、バーカウンター、ビリヤード台やダーツを楽しめる場も設けてある。
こちらも、内勤のホストが開店前の準備に忙しそうだ。
挨拶だけ交わすと、さらに奥のロッカールームへ向かう。
その間、若手や新人に留まらず、上位のプレイヤーも、嶺二に対して憧れの視線を向けてくる。
嶺二がナンバーワンであると同時に、アルファだからだ。
人口の9割をベータが占めると言われる中で、アルファとオメガは希少な存在だ。
二次性を隠している人も多いので、アルファというだけで目立つのは仕方ない。
嶺二が控室に入ると、ロッカールームいたホスト達が、一斉に頭を下げた。
「レイさん! おはようございます!」
「おう」
嶺二は鷹揚に頷くと、空いたソファーにどっかりと座った。
休憩所も兼ねているため、高級な長ソファーが二つ、他にテーブルとパイプ椅子が並べてある。
嶺二は片手にスマホを持ち、客にメールを打ちながら、煙草を吸った。
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