あなたの知らない、新しい私に

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北山先輩はあまり良い噂を聞かない。サークル内に特定の彼女がいるにも関わらず、それ以外の人とも……といった話が絶えない。勿論サークル内の人が相手だ。私に対しても基本距離が近い。この先輩は、女なら誰でも良いのかもしれない。イケメンでも何でもないのに何故モテるのだろうか?できればあまり近づきたくなかった人種だ。 駅まで歩くと結構な距離だし、店がピンチならなるべく早く着いた方がいい。歩くよりも車で送ってもらった方が楽。今後サークルを一緒にやっていく相手なんだから、変な展開は無いだろう。そんな安易な考えで北山先輩の車の助手席のドアを開けた。 「バイト先、どの辺り?」 「黒川です」 「黒川?ここから近いじゃん。送ってあげるよ」 「えっ。あの、北山先輩、今からゴハンじゃ」 「俺一人遅れたって問題無いでしょ。一旦解散してるし」 既に車は最寄りの堀田駅とは反対方向へと向かっていた。北山先輩、本当に黒川まで送ってくれるつもりなんだ。でもこの先輩、彼女いるはず。なのに車内に男女2人きり。まずくないか?気にする私が自意識過剰なの? サークルの先輩の車に乗せてもらったことは何度かある。1年女子だからか、運転手が男の先輩だと助手席を勧められることが多かった。言われるがままに助手席に座ることが多いんだけど、大抵は運転席と助手席の間には肘置きがあった。肘置きが境界線となっているようで、運転席と距離が近くても、少し安心できた。 ところが今日は。北山先輩は運転席も助手席も肘置きを上げていた。この状態をラブシートと呼ぶらしいということを最近知った。
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