対面

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対面

あの後の車内での北山先輩は、すっかり先輩モードに戻っていた。 やっぱり男モードになってたんだ。あわよくば感があったと思った私の勘は合っていたと思う。 先輩モードに戻ってくれたから安心して後輩として振る舞えた。黒川駅で自然にお礼も言えた。変な風にならなくて本当に良かった。 「おはようございまーす」 「おお、白雪。ありがとうな、助かったよ」 19時になる15分前に入れた。いつもの到着より早いけど、北山先輩を撒く為にはしょうがなかった。 ──バイト先に恩を売っておくのも大事だよ。 持丸先輩の言葉を軽く噛み締めてホールに向かった。 ……え、その、後ろ姿って。 「おはようございます」 振り返った彼は気まずそうに、若干硬い表情で私にテンプレートの挨拶をした。 今日のホールを組む相手は、速水くんだった。 「おはようございます。……あ、いらっしゃいませー。お客様2名様でよろしいでしょうかー」 今はバイト中だ。目の前のことに集中しよう。速水くんとの言い争いは、お客様には関係ない。 ホールに入ってすぐにお客様が来て良かった。バイト中に気まずくなるのは、やりずらい。 「ツーホットです」 オーダーをキッチンにいる店長に通す。 「白雪、そのホット持ってったらご飯入って。その後キッチンね」 そうだった。店長と速水くんと私の組み合わせだと、キッチンに入るのは私だった。
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